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『F値』とは
・取り込む光の量を決める数値のこと
・F値が小さい→ボケ F値が大きい→くっきり
・光のとおる幅を広げるイメージ
・低すぎると『周辺減光』高すぎると『回折現象』が起こる場合も
・F値が使いこなせると写真の主役が決まる
撮影スタジオ代田ファクトリ―・スタッフのタカハシが、むずかしいカメラ用語を解説していきます。
今回はF値について! 最近ではスマートフォンのスペックでも話題にのぼる単語・『F値』。いったい写真のなにが変わって、どんな仕組みなのか? そもそも F ってなんなのでしょう?? 本記事ではそんな 「?」 だらけのF値、そして『回折現象』さらには『周辺減光』について解説していこうと思います!
―主役を決める『F値』の効果-
『F値』とは簡単にいうと、取り込む光の量を決める数値のこと。ボケによって写真の主役が変わったり情報量が変わってくるので、非常に重要な機能なのです。
F値が小さい数字になればボケがうまれ、はっきりと映る範囲は狭く近い場所のみになります。逆にF値が大きい数字になれば広い範囲にピントが合い、ボケは少なく遠くの場所もはっきりと写ります。
こちらの3枚の写真は、F1.4 ・F8 ・F16と変えて撮影したもの。
(F1.4)
(F8)
(F16)
F値の数字が小さい場合は主役が明確になります。この場合は柱が主役。F値が大きくなるにつれて、ハッキリと映る範囲が広くなり、情報量も多くなっています。
またピントが合う範囲の広さを『被写界深度』とよぶことも。F値の数字が小さいと被写界深度は「浅い」、F値の数字が大きいと被写界深度は「深い」といいます。
現実の立体感を平面の写真であらわすために使われる被写界深度。最初のうちはこの独特な考え方にまったくついていけなくて……。
個人的には「平面の画像を掘っていくイメージ」と考えて理解しました。平面に無理やり奥行を出すイメージというか……。なんというか……、むずかしいんですけど……。とはいえ分かりやすいイメージはひとぞれぞれ。みなさんも自分に合ったイメージで被写界深度の考え方をとらえてみてください。
ちなみにF値のFとは、英語で「焦点の」を意味するfoucsの形容詞系「focal」に由来しています。この点からも焦点=ピントと関係の濃い数値であることがわかりますね!
―『F値』とレンズの仕組み―
さてここからはお話は、F値の仕組みについて。いったいF値はどのような仕組みで変化し、写真にボケの効果を与えているのでしょうか?
現在販売されているカメラではダイヤルを回すだけで簡単に変更できるF値。じつはこの処理、カメラ本体では完結しているわけではなく、レンズの内部、ガラス面の奥にある穴の部分が深く関係しているのです。
ガラス面の奥にある穴は、複数枚の金属製の羽があつまり構成されているもの。カメラ本体のダイヤルを回すと、F値変更の指示がレンズに伝わり穴の大きさが拡大・縮小します。結果、光を取りれる量が変わり、写真のピント範囲が広くなったり狭くなったりするのです。
穴が狭い場合はF値の数字は大きくなり、より遠くの光まで取り込むことができるため、広い範囲にピントをあわせた撮影が可能に。逆に穴が広い場合はF値の数字は小さくなり、近くの光だけをりこむため、背景にボケがうまれます。
個人的には「穴が大きい=広い範囲をはっきり映せる」と考えていたので、この仕組みには驚きでした。
簡単に聞いてみたところ、「カメラが人間の目と似た構造をしていると考えると分かりやすい」とのこと。
例えば、夏に外出たときなど日差しが強すぎると、まぶしすぎて目が見えにくくなってしまいますよね。この現象は、光が多すぎて目がキャパオーバーを起こし発生しているもの。
カメラも同じようなことがいえ、光を取り込みすぎると写真は限界を超え、俗にいう『白飛び』が起こり真っ白に。そのため遠くの物をはっきり写すには、あえて光を遮断してあげる必要があるのです。
しかし、取り込む光が少なくなることから、シャッタースピードが長くなるデメリットも。手振れが起きやすくなってしまうため、大きいF値で撮影する場合は三脚を使用するのがオススメです。
また穴を広くする=F値の数字を小さくすることを『開ける』、穴を狭くすること=F値の数字を大きくすることを『絞る』といいます。F値自体を、『絞り』とよぶ場合もあります。
ちょっとややこしいですね……いちど画像にまとめてみましょう。
―高ければいいわけではない!? 一番画質のいいF値とは?―
F値は画質にも大きな影響を与えています。一般的に最高画質になるといわれているF値はF8周辺。
理由はレンズに使われるガラスが若干の丸みを帯びていることに由来。中心になればなるほどガラスのゆがみが減り、より正確な被写体を写すことができるのです。
イメージ的には絞ることでレンズの上質な部位だけを使用でき、画質が良くなっていると考えるとよさそうです
しかし、絞れば絞るほど画質が向上するわけではないのがカメラの難しいところ。
絞りすぎると光が入る道を狭くなりすぎてしまい、ちょうど少し開けたトビラから漏れる光のように、レンズ内で光が拡散。かえってレンズの全面を使ってしまう事態が起きるのです。絞ることで画質が低下する一連の流れを『回折現象』と呼びます。
ちなみにF値を開放にしすぎた場合でも、写真の四隅が暗くなってしまう『周辺減光』という現象が起こる可能性があります。
―F値で変わる写真の役割―
画質が良くなるのはF8周辺。
しかし一年ほど写真を撮ってみた経験では、ボケが欲しかったり、シャッタースピードをはやくしたかったり、という場面もあり一概に「F8周辺が最高!!」といえるわけではないようです。
例えばこちらの写真。背景がボケているため、被写体を撮った意図に注意を向けることができます。
(F2で撮影)
対してこちらの写真では、画面全体がハッキリと映っているため、画面全体で意味のある写真となっています。
ちなみに写真の場所は靖国神社。鳥居と月、夕暮れの蒼がとてもきれいで、ぼんやりとした空とシャープに映った鳥居や枝が対照的な、お気に入りの写真です。
撮影において非常に大きな役割を果たしているF値。
きっとF値において重要なのは、撮るテーマや用途によって使い分けることなのでしょう。それができれば「一人前のカメラマン」なのかもしれませんね。
それでは、また!!
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